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※ Last Updated:09/24/2020

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聴覚障害者の就職活動における悩みと企業の選び方

–企業の考えは十人十色–

聴覚障害者の就職活動における悩みと企業の選び方

   

【 この記事を書いた人 】
ノウリ
ノウリ

障害者手帳3級所持、後天性の聴覚障害者。
大手日系メーカー、外資金融など転職回数は計3回。実生活や仕事では補聴器を使用し、読唇術を使用して声も聞きながら会話をしている。

   

Butterfly Worldのノウリです。

   

就職活動は難聴者に限らず、就職が結婚と全く一緒だということは健常者の世界と同じです。

求職者と企業がマッチングするかしないか、それだけです。

   

ただ一つ、就職活動をする時にダイバーシティ&インクルージョンを掲げていたとしても、その中身は企業によって2通りの考え方があることを知っておくと自分が活躍しやすい場を探して、選択することができます。

   

Agenda

 
・聴覚障害者の悩みを解決する近道は企業の特色を把握する

・そもそもダイバーシティ&インクルージョンとは

・企業によって違う2通りのダイバーシティ&インクルージョン

・聴覚障害者の悩みと企業の選び方まとめ
 

   

就職する時は長期的に働くことを前提にどこで働くかを考えますよね。

もちろん、自分の目指すキャリアが変わったり、プライベートの環境が変わったりして転職することは普通にあります。自分もそうでした。

   

ノウリも何度か転職していますが、きちんと見極めたため、ありがたいことに企業とのミスマッチで転職したことはなかったです。

   

これから社会に出る方も、ミスマッチが既に起きていて今後の転職でも同じことが起こることの無いように解説するので、是非とも参考にしてください。

   

聴覚障害者の悩みを解決する近道は企業の特色を把握する

聴覚障害者の悩みを解決する近道は企業の特色を把握する

   

‘聴覚障害者が考える聴こえる状態と健常者が考える聴こえない状態の壁’の回で双方の世界があることについて話しました。

   

今回も世界が別であるという考えが前提にもなりますが、企業で働くことについてはこうなります。

 
◆ 難聴者の世界の出身だが、健常者の世界で健常者と同等に扱ってもらう。

◆ 難聴者の世界の出身として、健常者の世界で活かして欲しい。
 

   

日本人がアメリカで働くことを例にしてみる

   

先程の2通りの選択肢を分かりやすく書いてみるとこんな感じです。

 
◆ 日本出身だが、アメリカで働くにあたってアメリカ人と同等に扱ってもらう。

→業務をする上でその英文分かりませんは通用しない。もしそれを言えば解雇もあり得る。

→ただし、能力を評価するので管理職や給与は同等に与えられる。

◆ 日本出身として、アメリカで働かせて欲しい。

→英語がある程度分からなかったとしても大目に見てもらえる。

→ただし、簡単な事務的な仕事になるので、給与は低めになる。
 

   

これを理解した上で、もう一度こちらを考えてみてください。

 
◆ 難聴者の世界の出身だが、健常者の世界で健常者と同等に扱ってもらう。

◆ 難聴者の世界の出身として、健常者の世界で活かして欲しい。
 

   

細かいことはこの後に解説しますが、この時点でダイバーシティ&インクルージョンの中に2通りの考えを持つ企業がいることが分かりますね。

   

自分に合った世界と企業を選択する

   

ノウリは前者側なので正直言うと、求人票に「簡単な事務作業。WordとExcelの出来る方」「給与〇〇万円(初任給程度)」と書かれているのを見ると、難聴というだけで頭脳や能力が低いと思ってるのかよ…完全に障害者とカテゴライズして足元見てるな…と毎度思っています。

   

言うまでもなくノウリなら前者を選択しますが、人それぞれ企業で働くイメージやこうありたいという働き方は違います。

   

ただ、最初に言った通り、結婚相手(企業)の求める相手がその条件であるだけなので、そういった人材を企業が求めているのならば他を当たりましょう。こちらの求める結婚相手とマッチしていないのですから。

   

そもそもダイバーシティ&インクルージョンとは

そもそもダイバーシティ&インクルージョンとは

   

ノウリは計3回転職をし、日系も外資も様々な業種も渡り歩きました。

本当に様々な企業の姿がありました。どんな企業が良くて、そうではないかは自身が求めるものによって変わってきます。

   

ダイバーシティ&インクルージョン

   

多くの大企業では、ダイバーシティ&インクルージョンの考えを示しています。

意味は以下になります。

   

 
外面的な違い(人種・性別・年齢)と内面的な違い(宗教・価値観・性格・嗜好)の多様性を認め、個々の能力を活かす。
 

   

中小企業やベンチャー企業に関しては、多くは事業に余裕が無いため、ダイバーシティ&インクルージョンを考えられず、ここは普通の人だけで成立されているのはご了承下さい。

もちろん、ほとんどはHPに掲載されていませんし、彼らはまだ法的にも問題無いのです。

考え方としては、事業がある程度成立した大企業が更なる事業拡大のために、特別な人を迎え入れ、様々な考え方や見方を取り入れることで、事業に更なる改革をもたらすことです。

   

始まりはフランスから

   

諸説ありますが、Inclusionという語源がフランス発となっています。

1970年代にフランスは福祉国家の諸制度を整えており、その中で障害者が排除される状態が起こり、それを「Social Exclusion(社会的排除)」と呼びました。その後、欧州の失業問題がクローズアップされた際に「Social Interaction(社会的包摂)」が対義語として広まりました。

   

その為かは分かりませんが、欧州系の外資は”障害者=健常者の様な普通の人達とは違った特別な能力を有する者”と考える企業も少なくありません。

   

企業によって違う2通りのダイバーシティ&インクルージョン

企業によって違う2通りのダイバーシティ&インクルージョン

   

日系、外資、業種に関わらず、ダイバーシティ&インクルージョンの色はそれぞれです。

ノウリが経験した限りでは大きく2種類あります。

   

 
① 障害にフォーカスせずに健常者と同等に扱い、能力にフォーカスして業務を与え評価し、給与も健常者と変わらない。

② 障害に極力配慮し、事務的な業務が主となり給与は健常者よりは低くなる。
 

   

能力重視の企業

   

まず前者について、「障害にフォーカスしない」とありますが、難聴であれば電話対応が免除となったりします。これは、“配慮”というより、多様性の包摂という考え方になります。

そもそも、業務を遂行するにあたり、電話対応が無くても業務は行えるように考えるのが当たり前という考えです。電話対応できるのがデフォルトというのがそもそも間違った考えのため、”配慮”という考えもおかしくなります。

その上で、任務を問題なく遂行すれば評価も給与も分け隔てなく会社は与えます。

つまり、能力さえあれば障害など見ていないのです。

   

このダイバーシティ&インクルージョンに対するメリットとデメリットは以下です。

 
◆ メリット:

能力を最大限引き出すために障害をカバーする必要なものは要請すれば一通り揃う。

◆ デメリット:

結果を出せなかった場合、障害があるからと言い訳は通じない。普通に降格もあり得る。
 

   

こういった企業は、障害に関わらずガンガンキャリアを積みたいと考える人に向いています。障害部分のカバーは最初に要請しているため、後になって障害を理由にした言い訳は通りません。

   

障害者には最大限配慮する企業

   

後者については、障害者が社会で働くのをバックアップするという考え方が強いです。そのため、難解だったりハードルの高い業務をアサインされることはほとんどありません。少なくとも業務で悩むことは無いです。また、残業もあまりありません。

   

こちらのダイバーシティ&インクルージョンに対するメリットとデメリットは以下です。

 
◆ メリット:

業務は事務的なもので難しく考えることは無い。

◆ デメリット:

キャリアを積みにくく、リーダーや管理職になることは難しい。また、給与もほとんど変わらず健常者の一般平均的な初任給レベル。
 

   

こういった企業は、そもそもキャリアを求めずに普通の人と一緒に楽しく働きたいと考える人に向いています。そのため、障害があって何か大きなミスをしたとしても簡単に解雇されることはあまりありません。

   

聴覚障害者の悩みと企業の選び方まとめ

聴覚障害者の悩みと企業の選び方まとめ

   

聴覚障害者に限らず健常者も同じように、人にはそれぞれの望む働き方があります。

   

行きたい企業が見つかった時、自分がガンガンキャリアを積みたいタイプだったとして、でもその企業は配慮型だったなんてこともあります。

その時に、自分がもし健常者だったらな…と思うもしれません。

   

ですが、もし自分が健常者だったとしても、その企業が聴覚障害者に配慮型を求めているように、健常者にも求人票に書かれていないだけで暗に配慮型を求めているケースもあります。

そう考えると、聴覚障害者は求人票の段階で企業がどちらのタイプを求めているか分かるので、ミスマッチを防ぎやすくなります。

   

能力重視型と配慮型の難易度

   

聴覚障害者が就職活動の時に考えることは、自分の働き方をイメージし、企業を選択することがミスマッチが一番起こりにくい方法です。

   

ここで、よくある質問や悩みについて回答したいと思います。

   

就職活動中によくある質問や悩み:その①

   

自分は能力重視型だが、自分が行きたいと思っている企業が配慮型だった。どうすればいいの?

   

自分の望む気持ちのバランスを考えるべき。
どうしてもその企業で働きたいなら、自分が配慮型として仕事をする。逆に、その企業よりも自分の希望を通したいのであれば、他の企業を探そう。

   

これは、最初にも言った通り、就職は結婚と同じなので、両想いになるのは聴覚障害者の就職に限ったことではありません。

企業か、自分の望みか、どちらかを選択しなくてはならない場面は誰でもあります。

   

就職活動中によくある質問や悩み:その②

   

ぶっちゃけ、能力重視型と配慮型、どちらが難易度が低いの?

   

企業の性格にもよるけど、全体的に配慮型の方が難易度は低いと感じるよ。

   

本当に企業によりますが、ざっくり言えば日系企業は配慮型が多く、外資は能力重視型が多いです。

もちろん、これは聴覚障害者の就職活動だけでなく、全てに当てはまることでもあります。

   

ただ、一言で能力重視型・配慮型と言っても、パワーバランスがそれぞれあります。

例えば、ノウリが従事していた日系企業は能力重視型60%・配慮型40%という感じでした。あくまでも自分が感じたことですが。

この場合は、能力重視型のパーセンテージが高いのでどちらかと言えば能力重視型の企業だったと感じます。

   

就職活動中によくある質問や悩み:その③

   

自分が能力重視型だったとして、企業に合わせて配慮型に入ることができるの?

   

企業に全力で合わせればできないことはないよ。
けど、今までの経歴や面接での受け答えでガンガンキャリアを積みたいタイプだと分かれば、企業は合わないんじゃないかと見抜くからその辺は自分次第だね。

   

もちろん、今までは能力重視型だったが、結婚や出産やその他諸々の理由で配慮型になる場合もあると思います。またその逆もあるでしょう。

その場合は、素直に自分の気持ちを偽りなく伝えるだけで難しいことはないです。

   

ただ、この質問は企業に合わせることでその企業で働きたいという場合になるので、その思いが強ければ、面接で企業に選ばれるようにする必要があります。

   

余談:ノウリが大企業のCEOだったら

   

最後に、ノウリが大企業のCEOだったら障害者雇用について人事にこう言及します。

   

「能力にフォーカスして見るように」

   

なぜなら、能力が高い人を雇うチャンスを逃すし、仮に能力が高いに関わらず‘障害者として扱うフィルター’を通して雇ってしまうと完全に宝の持ち腐れだからです。